人気番組「関ジャム」で、プロが選ぶ2023年間マイベスト選出企画の放送が終了しました。TOMOOさんが「いしわたり淳治さんの1位」と、「蔦谷好位置さんの2位」に選ばれました。
この記事は、関ジャムの番組内で語られたTOMOOさんに対するコメントを文字に起こして残しておくための記事です。
あんな褒め言葉、残さないのはもったいない。
そして、TOMOOさんが発表した1stメジャーアルバム「TWO MOON」のインタビューの中に「角とまる」についてのコメントがあったので紹介させていただきます。
関ジャムでのTOMOOさん褒め言葉、文字起こし
グレープフルーツムーン
蔦谷好位置さんが第2位に選んだ、「グレープフルーツ・ムーン」。
ここから文字起こししていきましょう。
ナレーター「何気ない日常をどう切り取り表現するかというのはポップスにおいての役割のひとつですが……TOMOOは歌詞だけでなく作曲においても心情や情景描写ができるシンガーソングライターです。蔦屋が歌詞で注目したのがここ」
「夕方の風に紛れた 昼間のコンクリートの熱」(歌詞)
「瞬間を切り取るだけではなく時間の経過も観じさせる作詞作曲能力、歌唱表現に言葉を失うほど感動した1曲です」
ここから蔦屋さんが話します。
「いや、これ、例年なら1位ですよ。1位がすごすぎて、またあれなんですけど、いや、もうホント天才ですよ。この人、ホント。あのね、この曲、グレープフルーツムーンっていうのは、1人の女声が少女でもない大人でもないっていう年代に差し掛かって、そこの自分の肉体だったり、精神の変革と向き合っているという曲だと思うんですよ。
ピアノを使って解説
「夕方の風に紛れた 昼間のコンクリートの熱」
って書いてますよね。
昼の11時とか12時に太陽に照らされたコンクリートの熱を夕方に感じてんすよ。つまり昼間っていうのは自分の少女時代なんですよ。夕方っていうのは、今、もう夜でもない、昼でもない。今、大人でも、子供でもない自分なんですよ。そこに少女時代の情熱とか多感な頃のことを感じてる。っていうメタファーなんです」
サビ前に転調するところを説明
「実はフラットが1個ふえただけなんです。だから気付く人は気付くけど、気付かない人は気付かない。つまり、おまえ何年経っても変わんねえな。っていう人もいるかもしれないけど、久しぶりに会ったら、あれ、なんかすごい大人っぽくなったねっていう転調なんですよ。そーいう転調やってんすよ。
ボクがけっこう響いた2番の歌詞ですね。
「もう苦いのも食べられると 気がついた頃に思う それはさ、豊かさ? 鈍さか? なんてね」
ちょっと照れが入ってる。つまりグレープフルーツって甘酸っぱい。甘酸っぱいって少女時代ですよ。苦味もある、大人の苦さ。これを一言でこうやって表現するって素晴らしいな…って。
蔦屋さんの褒め言葉がきれいで、文字に起こしちゃいました。
スーパーボール
そして「スーパーボール」を第1位に選んだのが、いしわたり淳治さん。
ナレーター「声とメロディーセンス、その言語感覚がとにかく素晴らしいです。自分のオリジナルな理屈や考えを歌で伝えようとすると、説明文みたくなってしまって聴いたときにもたついてしまう事があるのですが、彼女は自分の想いを自然な言葉の中で涼しげに歌として伝えられてしまう才能の持ち主という感じがします。」
「怖がりのまま踊って あなたに見せたい虹色 槍出せ角出せはいらない 丸いままつらぬいて」
ナレーター「目の前の壁を壊せ、未来を切り拓けみたいな歌詞はこの世に沢山あるけど、尖らずに丸いままつらぬけというメッセージは他ではあまり聴いたことがありません。ちょっとした違いのようだけど、どこか耳新しくて、力強い言葉として届いてくる。彼女はこれからメジャーシーンのど真ん中で長く活躍していく気がします」
ここからいしわたりさんの言葉です。
「この自分の理論みたいなものをやっぱ伝えたいんですよ。でも、伝えたいけど、説明文をしなきゃいけないんですね、歌の中で。これを、あまり説明しすぎるともたつくんですけど、彼女はすごいナチュラルに風景描写みたいなところの中にそれを織り交ぜることができて、例えば、この、
「おさまりのいい綺麗なビルじゃ」って始まりのAメロがあるんですけど、四角いオフィスビルっていうものの対極がポケットの中の子供の頃から知ってる小っちゃなスーパーボールだっていう……この対極を、一瞬でこの行数で正確に伝えて、そっから先、丸いままつらぬけっていう話になってる
スーパーボールの躍動感とかすべてが計算されつくしている感じがして、これって特殊な才能だなーっていうか、素晴らしい才能だなーと思いましたね」
横で話しを聞いていた蔦屋さんが話しに入ってきます。
「ユーミンさんと中島みゆきさん、両方の才能持ってる」
頷きながらいしわたりさんが続けます。
「彼女のキャリアを見たら、6歳でピアノを始めて、その後、知らない曲の歌詞をそのまんまコードを付けて、自分でオリジナルで作曲を始めたんですって。つまり、それって、言葉がどう響く、どう聴こえるかっていうことを最初から考えた作詞作曲スタートなんですね。だから歌の響きだったりっていうところに、必要のない要素を省いたりっていうことを…おそらく、感覚でできてるんだと思う」
蔦屋さんの、「ユーミンさんと中島みゆきさん、両方の才能持ってる」というコメントに納得…。
過去のインタビューから抜粋
TOMOOさんが出したメジャー初アルバム「TWO MOON」にはスーパーボールの「まる」のイメージを引きずっているようなエピソードトークがありました。
- 物事を突き詰めていくと、単純に二者択一では割り切れないことって多いじゃないですか。そんなことを考えていたときに、ときとして願いの象徴みたいなイメージを持たれる月という存在に、そのニュアンスを託してみようと思ったんですね。実際、月は1つしかないんだけど、あえてそれを2つにすることで、「真実が2つある。願いが2つある」というイメージを表現できるんじゃないかなって。もう1つ付け加えるなら、最近“丸”に興味があって、その要素も月を連想させたのかも。
- 自分の名前にも“O”がいっぱい入ってるし(笑)。私は多角形の果てが丸だと思っているんです。そう考えると自分の中には絞り切れない物事のいろんな真実が角のようにいくつもあって、その状態は丸に近付いているってことでもあるのかなと思うんです。同時に、どっしりと安定した四角とは違って、自由に動きうる丸い形状にはいろんな可能性や強さがある気がする。「TWO MOON」というタイトルにはそんな思いも込めているんです。
- 本当のことを言うと「Grapefruit Moon」を録ったスタジオにあった黒いスピーカーに、白くて丸いウーファーが付いていて。それを見たときに「あ、2つの月に見える!」と思ったことが大本のきっかけなんですけどね(笑)。そこから連想して、あとからいろんな意味付けをしたところもあります。(音楽ナタリー、2023/9/27)
「スーパーボール」について
- さっきの“丸”の話に通ずるんですけど、一般的に個性が尖っていることって強さの象徴だったりするじゃないですか。尖って角ができれば、それが三角形でも四角形でも安定感がよくなるし、それによって扱いやすくなったりもする。でも私は、丸いことこそが元来の強さなんじゃないかと思うんですよ。強いと言っても、人に誇示するものではなく、いわゆる剣とか盾とは違う在り方での強さが丸にはある。見た目的な柔らかさはあるけど、凛としたものを内には持っていて、そこからクリエイトしたものをちゃんと放っていけるのが丸なんじゃないかなって。
- 私自身、棘を出すタイプではあまりないので、丸なりのプライドというか、誇りみたいなものに思いを馳せながら書いていったんです。丸いボールが凶器になることはあまりないけど、何かとぶつかり、接することによってポーンと跳んでいったりする。そういう可能性、豊かさがあることが丸の持つ元来の強さ。そんなことを曲にしました。ここ最近の自分の心情が一番出ていると思います。(音楽ナタリー、2023/9/27)
曲のバックグラウンドも理解して詞を聞き、音を聴くと、TOMOOさんの曲はまた格別です
「丸いままつらぬいて」
ホント、かっこいい言葉だね