2023/9/5にYouTubeに投稿されたAdoさんの「唱」。畳み掛けるようなリズムの渦にあっという間に巻き込まれたかと思えば、Adoさんのすさまじいボーカルでニヤけるしかなくなっちやうような、圧倒的な作品です。こんなボーカルは過去に私の記憶にはないです。
MVを見ていると、歌詞が格好良く画面に出てくるのですが、演出が格好良すぎて、老眼のおじさんが目で追うのにはきつい。
どんな歌詞なのか? 何回聴いてもわからなかった。そして日々の多忙さに「唱」は埋没していったのですが、最近ふとした拍子で、また「唱」を聞きまして、
「やっぱり、この歌はすげー」
と思い、和訳してみることにしました。
この記事では、和訳の完全版とそれを書くにあたり調べた言葉の意味と解釈を書いていきたいと思います。
目次
最初にググってみた
和訳する前に、最初はググって調べました。
もう誰かがわかりやすい和訳を書いてくれているのなら、私が書くまでもないしね……
でも、あんまり「ピン」とくるものがありませんでした。
適当な歌詞を音に合わせているだけでしょ
調べてみると、ヤフー質問箱にも投稿が何個かあり、それらは「唱」の意味を問うものでした。
たくさんあった解答は、
「音優先だから、リズムに合う言葉を適当にはめ込んでいるだけでしょ」
と、いうコメント。
「あの速いリズムに合う言葉を探してつなげているだけでしょ」って思っている人があまりにも多かった。
本当に……そうなのかな? 一流の作詞家が書いてんでしょ。そんな……、音に合う言葉だけ適当につなげたりする?
作詞家って誰よ?
Lyrics:TOPHAMHAT-KYO (FAKE TYPE.)様
???
なんて読むの、これ?
で、ググっていろいろ調べました
TOPHAMHAT-KYO
「トップハムハット狂」と読みます。
個人、人の名前です。
名前の由来は、昔ハム職人をやっていたことと好きなキャラクターで機関車トーマスに出ていた「トップハム・ハット卿」をかけているとのこと。それ以前の名前は「AO」さんと名乗られていたそうです。
2024/3月現在、「FAKE TYPE.」という名前のユニットで活動されています。
こんな人たちが作った、「唱」が、適当にリズムに乗る言葉の羅列であるわけがない
Ado 「唱」和訳
なので、ちゃんと調べて書いてみることにしました。
日本語の歌詞が多かったけれど、感覚としては英語を和訳する感じで作業できました。
全体のイメージ
歌詞を全部ゆっくり読んで、まず感じたことは、
- ステージで歌っている人がいる
- 夕方から夜にかけての開演時間
- 聴衆を煽ってる歌かな……
- 「もっとノッてこいよー」的な……感じ
- 「もっと騒げー」……的な感じ
- Adoさんのライブ、開演、最初の曲で聴衆を煽る歌のイメージを持って取り掛かりました
ひらたい日本語に訳したものがこれです。
動画で「唱」を流しながら、歌詞を見るにはこっちの方がいいかな? と思ったので、スクロールしながら見れるようにもしてみました。
日本語の歌詞を和訳する時代到来
「唱」は日本語いっぱいの歌で、歌詞を見ても英語よりも日本語のほうが多いですが、厳密に分けると、古語、現代語、英語、ラテン語が混ざりあった歌詞構成になっています。
順番に見ていきましょう。かなり自分好みに訳していますので、皆さんそれぞれのイメージとは必ずしも合致しないと思うのですが、これは「歌」なんで……正解の解釈とかはないと思いますので、私はこんな感じーってことでよろしくです
- 独壇場 ⇒ 一人舞台
- 傾け ⇒ 耳を傾けろって意味だと思いました……が、後でAdoさんが歌い方を解説している動画見てたら、「かぶけ」と読むことを知りまして、奇抜な身なりをすることを「かぶく」といいましたから、奇抜な格好をしている状態を意味しています
- 振り切ろう ⇒ 「傾け」が「かぶけ」と読むことと、USJのハロウィンゾンビパーティーソングであることから考えると、「恥ずかしがらずに奇抜な格好になりきろうぜ」。気分メーターの針が振り切っちゃうまで奇抜な格好で騒ごうぜーって意味だと解釈
- 御成り ⇒ 貴人、えらい人。てっぺんのえらい人という意味で、社会の上にいる偉い人という意味にもとれるけれど、ライブ会場で聴衆を煽る歌だとしたら、VIP席にふんぞり返って座っている踊らない偉そうな人のことかもしれません
- 宵 ⇒ 日が暮れて間もない頃。夜になる少し前のちょっとまだ明るいぐらいの時間帯のことと解釈
- コンプリートオーライ hell ⇒ コンプリートは完全に…という意味でそれがオーライと組合わさり、英語のhell はこの場合地獄ではなく、強調で使われていると察し、「この夕闇は完全に私のものにするから」と勝手に和訳
- Brah brah brah ⇒ などなどという時の口語体なので、適当な感覚になるような言葉をチョイス
- えも言われない ⇒ なんとも言い表せない、形容しがたい…という意味。何がなんとも言い表せないのかな? と考えれば、やっぱりビートであり、リズム、音楽であろう。「例えようがないリズム」と勝手に和訳
- 全土絢爛豪華(ぜんどけんらんごうか) ⇒ すべての土地が豪華で華やかって意味だけれど、「唱」なので、この場合はステージのことを意味しているのだろうと推測。ペンライトや照明できれいな風景を例えていると解釈
- Attention騒ごうか ⇒ 人前で話すときなどに「注目」の意味で、Attentionを使うように、ステージは豪華できれいだけれど、私に注目しなさいよ!! という意味で解釈
- 意思表示にもうじき衝撃の声高らか堂々登板(どうどうとうばん) ⇒ リズムに乗らすために言葉の順序が入れ替わっていると判断。「もうじき私が、衝撃の声、高らかに、意思表示してステージに登場するよ」って意味かなと解釈
- もう伽藍洞(がらんどう)は疾っくの疾う淘汰(とっくのとうとうた) ⇒ 伽藍洞(がらんどう)はお寺という意味もあるが、がらんどう、空洞という意味もある。後半が「とっくのとうに淘汰」と「消えてしまっている」という意味の内容から判断して、「からっぽのステージが聴衆で埋め尽くされてしまっている」ので、「空っぽだったステージはすでにない」と解釈
- Aye繚乱桜花(りょうらんおうか) 御出ましだ ⇒ 調べても「繚乱桜花」という言葉はなかった。反対ならありました。「桜花繚乱」これも同意味でリズム乗りを考えての倒置の一種ではないかと推測し、「桜花繚乱」のそのままの意味で解釈。先の空っぽのステージと対比した表現なので、実際の花ではなく、照明、レーザー、ペンライトなどが花のように光っている様子を歌っているのだと解釈
宣(のたま)う断頭台の上で
ここ悩みました……
- 宣(のたま)う断頭台の上で 燥げ華麗(はしゃげかれい) ⇒ 「のたまう」は偉そうに言うという意味。偉そうに言ってる、歌っているのは誰かというと、この歌詞の流れではAdoさん以外いない。偉そうに歌っている場所はどこなのかというと断頭台……。断頭台は簡単に言うとギロチンのこと。
なぜ「断頭台」がいきなり歌詞に……で、考えた。
歌にメッセージがある限り、それは時によって、また聴く人によって、偉そうに聞こえてしまう場合がある。ステージで歌っているけれど、Adoさんにとって、ここは断頭台。自分が処刑される場所。偉そうに歌っているように聴こえるかもしれないけれど、私の歌があなたに響かないのならば、それは私の「死」を意味する。歌は自分自身だから。私は命をかけてあなたにメッセージを送っている……という意味が込められた歌詞なのだろうか?
断頭台と首吊り台の類似点
この歌詞を見て、50代のおじさんが思い出すのはTHE BLUE HEARTSの「首吊り台から」。
欲望のままに生きた男。気付いたらお尋ね者の指名手配犯になって首吊り台の上にいる。歌詞の中にどんな悪行をしたかは書かれていない。「欲望だけがリアルなもので、それに従って生きてきたら首吊り台の上に立たされた」。そこでオレは笑って歌うけれど、あんたはそこで笑えるかい? 自分の欲望に忠実に生きてるかい? と問いかけてくる歌です。
「甲本ヒロト」を知らない人は、2024年に何人いるのだろうか? 逆に知っている人のほうが少ないのだろうか? 知らない人にはぜひ知っていただきたい音楽家です。いい歌いっぱいあるから、ぜひ聴いてほしい。特に知らない若い世代に。
- warning ⇒ その内容を受けて考えると、指名手配犯のポスターに書き込まれている「WARNING」が浮かんできます。が、全体的に音に乗り切れていない聴衆を煽って盛り上げていく歌詞なので、「そこの盛り上がっていない君たち、レッドカードもんだぜ」って意味で「警告」のWarning 、そのままの意味でいいのかな? と推測
ビートとリズムにのるワードチョイス
このあたりから、ワードチョイスがより独創的。リズムやビートにのることにファースト・プライオリティーが置かれているのは当然ですが、調べれば調べるほどちゃんと歌詞の意味も本意からブレないで意思を持って貫かれているように見受けました
- はんなり感情通りに八艘飛び(はっそうとび) ⇒ 「はんなり」は上品に、華やかにという意味。「八艘飛び」は源義経のジャンプに端を発した言葉で身軽に飛び回ることの例え。「気持ちのままに上品で華やかに思いっきり飛んじゃいなよ」と勝手に和訳
- 皮膚を破りそうな程に跳ねる心臓くらい激情的仕様 (Exotic vox) ⇒ vox はラテン語で声の意味。「激情」はとどめがたいほど激しく強い感情。自分では止めようがないほどの強いエキゾティックな声の意味とした。「仕様」は「show」、「唱」とも掛かっている
- 寿(ことぶき) ⇒ 祝うべきめでたい事柄、命が長いこと、長命
- shout it out ⇒ 叫べ
イニミニマニモ
- イニミニマニモ ⇒ eeny meeny miny moe(イーニー・ミーニー・マイニー・モー)のことで、「どちらにしようかな 天神様の言う通り」の英語版。
- ご来場からのご来光 ⇒ 「ご来場」という言葉から、ライブに来たお客さん、聴衆のことを意味していると判断。その中で光って目立っている人がいるのかかな? と推測。つまりあまり踊らないような「のりの悪い聴衆」がいるのかな? 複数人……と推測。その複数人を眺めながら、どれが一番のりが悪いかな? と考えているようなシーンを想像しました
- かくれんぼしてるその気持ち解放 (理性アディオス) ⇒ かくれんぼしているのは、のりの悪い聴衆の気持ちを意味しているのかな……みんなに自分自身を解放させようというAdoさんの企み?
- しゃかりきじみちゃう ⇒ 「しゃかりきじみてきちゃう」という文だと思います。「しゃかりき」は夢中になって何かに取り組むことを意味します。「じみる」は「いかにもそういう感じがする」なので、ものすごく勝手に解釈アンド和訳して「マジな感じになってくるから」
蛇腹刃蛇尾、騙る二枚刃、野心家嫉妬するようなジュース
そして難関……
- 蛇腹刃(じゃばらば) ⇒ 刃の部分がワイヤーで繋がれつつ等間隔に分裂し、鞭のように変化する機構を備えた架空の武器の一種
- 蛇尾(だび) ⇒ 「竜頭蛇尾」の「蛇尾」と同様の使われ方で「蛇腹刃」にくっつけられた造語であると判断。リズムを整えるためであろう。ことさらここのリズムとAdoさんのボーカルが心地よい。
- 騙る二枚刃 ⇒ 「騙(かた)る」はうまいこと言ってだますという意味。
- 蛇腹刃はよくわからんが…なんか強そうな武器であるので「竜頭蛇尾」の龍の頭的な比喩として使われているのだろうと推測し、後半の「騙る」という言葉の意味から、「強い武器で武装してAdoさんのリズムにのらないつもりで聴衆に混ざっているけれど、それってたいした武器じゃない(ただの二枚刃)から」というとんでもない意訳に決着。
- のりの悪い聴衆たち。彼らの心の壁を守っているものを蛇腹刃という強力な武器に例えている。しかし実際、それは強そうな武器ではなくてただの二枚刃のシンプルな防御にすぎないから、これから私がぶっ潰して、解放させてあげるからね……と解釈しました
- 野心家嫉妬するようなジュース ⇒ ここが一番悩んだところ。野心家をどう和訳するか…。「野心家」はひそかに抱く大きな望みを持ってる人、身分にふさわしくない望みを持っている人。
- ここでは、「別に踊らなくても、乗らなくてもいい。他に楽しいことってあるし」ってスタンスの人、Adoの音楽を楽しめていない人を野心家に設定しているのかな? と思いました。ワードチョイスはやはりビート優先で決めているであろうから、「野心家」の意味がバッチリ合致しなくてもノープロブレムなのではないかな。
- ジュースはなんだろうか? と予測するに、汗のことかな? と思い、嫉妬しているのは野心家の体そのもので、心とカラダがチグハグな現象が起きていて、心では踊らないよと思っていても、体が音に反応して嫉妬し汗をかいている…って状況と解釈。
カルマは難しい
- たぶらかすなかっとなっちゃ嫌 ⇒ 「たぶらかす」はだましあざむくこと。なので、「自分を騙すな」と和訳し、後半の「カッとなっちゃ嫌」は、「カッとなっちゃいな」という野心家に向けた「自分に怒れよ」って意味と、歌ってる自分には「カッとなっちゃ嫌よ」、怒りは向けないでねというダブルの意味があるのかな? と勝手に解釈
- カルマに至る前に 揺蕩うわ(たゆたうわ) ⇒ カルマは業。業は人間の行為や意識が生み出す善悪の実体……でいいのかな……。「揺蕩うわ(たゆたうわ)」は「揺れ動くままに任せる」という意味。なので、「自分で悟りを開く前に 私の声でゆらゆら溶けちゃいなよ」と解釈。
- 十色(といろ)のバタフライ ⇒ 十色は「十人十色」の十色から導かれていると思うので、人それぞれが違う個性を持っているという意味。バタフライは羽を広げて飛んでいく、美しく自由なものの象徴としてチョイスされた言葉だと判断。よって、「みんなそれぞれの色を出して自由に舞え」と和訳
- ご存じの通り騒々しい鼓動に絆(ほだ)されてもう止まれない ⇒ 「ほだされて」は身の自由を束縛されるという意味。「騒々しい鼓動」は興奮した自分。興奮した自分の体に、心が、意思がコントロールされて止まることができない、と解釈
- 衝動に塗装し描いた Daybreak肺貫通低音狂 ⇒ 「衝動」は人の心に働きかけて行動に駆り立てる刺激のこと。この場合の刺激はAdoさんの歌であり、このステージが創る空間全体のパワーであろう。それにライトや照明で塗装を施した「Day Breake」。Day Breakeは夜明けの意味なので、「宵から始まったステージはここで夜明けを迎える」オールナイトでライブしているって意味。
- 肺を貫通する低音に狂っている……とはどのような状態だろうか? 普通に考えれば「唱」の音楽の低音が効いているので、そのことだと思う。ここは素直にそう受け止める
- 喝采 ⇒ 声を上げて褒めそやすこと。褒める声をあげて、それを巻き起こすって感じが、「このステージに関係している皆んなをレスペクトしよう」ってニュアンスに感じられたので、そのように解釈。
すぴログ的所感
小学生にもわかるようにひらたい日本語に変えようとがんばったけれど、途中難しいところが多数。後から読み返して改善したほうがよい箇所は改善したいので、なにかご意見がある方は教えて下さい。
50代おじさんが想起する曲は「シュラバ★ラ★バンバ」
和訳しにくかった、「蛇腹刃蛇尾(じゃばらばだび) 騙る二枚刃」という場所、私はサザンを思い出さずにはいられません。
歌い出しの「シュラバ★ラ★バンバ」という歌詞がいきなり意味不明でしたが、歌詞カードを読むと意味が理解できる。
修羅場穴場女子浮遊
憧れのパラダイス パラダイス
愛乃場裸場男子燃ゆ
身を寄せりゃカモなる無限大
サザンオールスターズ「シュラバ★ラ★バンバ」より引用
男と女の修羅場に穴があり、女の子が気持ちよくて浮遊している
それは憧れのパラダイス
愛する場は裸の場所であり、男子は燃えてしまう
そこにすり寄っていく男子はかもにされちゃうけれど、そんな男は無限大にいっぱいいるんだぜってことかな……
リリースされたのは1998年。今から26年前です。私は28歳で、当時リリースされた「世に万葉の花が咲くなり」というアルバムを何度も聴いて、桑田さんすげーと興奮していました。このアルバムは名盤です!!
日本語の漢字の音読みは実に英語っぽいってことを教えてくれたのは桑田さんでした。
Adoさんの「唱」も「show」と確実にかかってるし、漢字と英語をかけ合わせたダブルミーニングが散りばめられた歌詞に出会うたびに、
「あーーー、日本人で良かったーー」
と、優越感があります。
この歌詞って、日本語を理解していないと、本当の意味ってわからないだろうなーという曲が桑田さんの歌詞にはたくさんあって、それが我々日本人のツボを押してくれるんですよねー。
今回、トップハム・ハット狂さんの歌詞を知れて、この人の歌をもっと聴きたいって想いが強くなり、現在のヘビーローテーションは、
- 「Windy Indie」 ⇒ 言葉の韻の踏み方が気持ちいいー
- 「FAKE LAND」 ⇒ 最初から最後まで気持ちいいー
おじさん世代にもお勧めの2曲です。
まとめ
Adoさんの唱をひらたい日本語に和訳チャレンジやってみました。小学生にもわかるような文章を目指しましたが、ちと難しい作業でした。
唱を聴く時の一助になり得れば本望でございます。